アイドルとファンの単純不可分性

ーアイドルブームの変遷

 

アイドルブームはかつてソロアイドルと呼ばれた中森明菜松田聖子が2大巨頭であり、彼女たちが主に現在のアイドルのイメージを形作ったと言っても良い。その後、1980年代に入るとおニャン子クラブモー娘。といったグループアイドルが誕生し、ASAYONのオーディション落選組から彗星の如くデビューを果たしたモー娘。は、デビューシングルCDがオリコン上位に食い込むという快挙を達成。アイドルは、そこから分岐して姉妹グループとして誕生したグループも存在し、AKB48は複数の姉妹グループを抱える大規模アイドルに変身した。

 

かつてのアイドルグループは専用の劇場(あるいはライブハウス)を持ち、自分たちのために見に来てくれるファンのために、あらゆる媒体を駆使して自分たちの存在をアピールした。その代表的な媒体が、当時画期的だったSNSである。AKB48の代表曲「恋するフォーチューンクッキー」は、MVから動画までの作成をSNSで募ったファン全てに任せ、ファンが作り上げた完成度の高いMVと動画編集で一躍有名になった。これはマーケティング用語でいうクラウドファンディング行為に該当し、ファンの技術力と知恵がギョッと濃縮された、完成度の高いMVに仕上がっている。

 

このようにSNSを活用したマーケティングは、AKBのみならずあらゆるグループが実践している。例えば、ファンとアイドル同士の対面イベントである握手会は、元をたどればSNSという媒体を活用して告知を行ったり、握手券の先行購入権及びグループの写真が3点セットになったアルバムをプレゼントしたり、いわゆるアイドルからファンへ大がかりなサービスを提供あるいは告知することでファンは嬉々として応募し、わざわざ遠い地方や都内にまで飛んで現場へと向かう。アイドルはファンがいなければ成り立たない職業なのだ。

 

ーファン存在なしでアイドルは成り立たない

 

例えば、アイドルが豊満なボディやセクシーな画像を載せた写真集を発売したとすると、そのターゲット層は当然そのアイドルのファンになる。ファンは写真集を購入しクレカやデビットで精算を済ませると、翌日になってアイドルの写真集が配送される。この時点で1人のファンとアイドルによる売買は成立しているのだ。アイドルはファンからの購入金額を元手にファンクラブを立ち上げたり、広告の枠を増やすことで徐々にその販路を押し広げているのだ。アイドルが書いた書籍の出版やシングルの売上も、ファンが購入することにより印税収入として手元に入り、アイドルの懐は徐々に潤っていく。人気のないアイドルの場合、いくら中身の伴った書籍を出版しても、そんな目立つ書店コーナーに置かれたりはせず、その不人気さもあって大した利益は見込めない。在庫処分として返本制度に基づき出版社や雑誌社に贈られるか、安値で販売されるバーゲンブックに格下げされるかの2択である。

 

アイドルがファンに対して与える影響力は弱いが、ファンがアイドルに対して与える影響力は絶大なのだ。アイドルが出てるCMやドラマ映画などの作品も、より多くのファンが見てくれることでギャラは膨れ上がり、視聴率の底上げに大きく貢献している。そして視聴率の高いアイドルを引き続き起用するという風潮が生まれ、アイドルの活躍に一層拍車をかける。売れないアイドルは、まずどうすればいいのか、あるいは売れてるアイドルをお手本にして、何が自分に足りないのか、根本的なところから身の振り方を改める必要がある。

 

ー最後に

 

アイドルブームがいつまでも続いているのは、日本がエンタメ国家だからという見方もできるが、何よりコンテンツ消費にいまだ強い「オタク」の存在があるからだろう。アイドルはオタクの存在を糧に、今も活躍している。まさに相対取引のような関係性であり、ファンとアイドルが密にコミュニケーションを取れる環境を整えることでファンによるアイドルへの推し活は今後さらに熱を帯びることになるであろう。