クマの生存戦略

クマは大型の肉食哺乳類です。

雑草から小動物まで肉食の対象としており、凶暴性が高いと言われています。

よく登山やハイキングに行く人に「クマの出没に気をつけてください」と注意を促すのは、一般的にクマが人を襲う(=人を喰らう)動物であるからです。

そんなクマの出没事件、最近はみょうに見かけるようになったのですが、その背景として、森林の伐採や間伐、植樹などによる自然開発が主な原因として挙げられます。

特に森林開発は、クマの生存場所でもある巣穴を奪ってしまうほか、捕食とする獲物も減ってしまうため、厳しい環境下での暮らしを余儀なくされます。

そうなると必然的に人里へ降りて栄養分となる食べ物を物色するようになります。

最近、田舎でのクマ出没事件が多いのは、そうした生存戦略に長けたクマの危機感の表れなのかもしれません。

例えば、栗や木の実などの食べ物は、通常、森林に分布していますが、人里へ降りた先には果樹園や農地などが広がっており、そこを住み家として生息してしまうクマも出てくるようになりました。

つまり、人間の住処を奪うようになった(=クマが味を占めるようになった〜ということになります。

味を占めたというのは、人間の住む場所には、豊富な栄養源と食料が詰まっている、だからこそ、人里へ降りてターゲットとなる食物を探すという意味。

秋から冬にかけては、クマは「冬ごもり」という特殊な期間に入ります。

冬ごもりとは、呼吸・排泄・摂食など諸々の生体機能の一切を停止させ(あるいは鈍化させ)、エネルギーを温存しておくというものです。

しかし普通の冬眠とは違い、クマの冬ごもりは少し特殊で、エネルギーを温存しておくという根本的な目的は変わらないものの、外敵から身を守るために最低限の余力は残しておこうと、完全に深く眠りにつくわけではありません。

むしろ寝ている間もクマは外敵の襲来に備え、眠りを浅くしています。

少し物陰があったり、足音が近づいてきたりするとただちに起きて反応し、クマは外敵をやっつけるのです。

クマとは相当な生存戦略に長けた動物であり、自分のテリトリーに足を踏み入れた存在は、必ず仕留める存在です。

しかしその生存戦略が今や人間により脅かされているのが現状です。

人間による森林開発が進んだ結果、クマのテリトリーとなる巣穴が減ってしまい、人里へ降りざるを得ない状況に追い込まれてしまったのです。

クマに限らず、そうした人間のエゴによって、生存が脅かされている動物は多くいます。

連日のように報道される「クマ出没事件」。

これは人間によって生み出されたものだったのですね。