脚本家

黒澤明さんは、宮崎駿さんや坂元裕二さんと並ぶ世界を代表する名監督です。人生の長さに比して担当した作品は30作こそ少ないものの、その1つ1つの作品に注いだ魂は並々ならぬものがあるでしょう。実際、黒澤明さん手がける作品はほとんど大ヒットをしています。そしていくつかの作品から着想やインスピレーションを得て、黒澤明さんの作品を参考にした映画ドラマも数多くあります。享年88歳。その壮大な人生論を語る上で外せないのが、その脚本家としての腕前。

 

脚本家はオリジナルのストーリーを考えたり、それをもとにプロットを組み立てて完成まで仕上げていくのですが、その構成力といい骨格といい何もかもが完璧です。無駄を削ぎ落としたシンプルな構成ながら、登場するキャラ1人1人に明確なストーリーが存在し、どんなに出番の少ない脇役でも主役を立たせるといういぶし銀的な役割を果たしており、登場するキャラ全員の名前を覚えていたということもザラです。

 

映画界、まして脚本家の腕前によって、映画の興行成績を左右すると言っても過言ではありません。そして多くの脚本家がオリジナルの作品を仕上げ、プロデューサーに提出するのですが、大体は手直しを加える。これがお約束となっています。なぜなら、脚本家を信用していないからです。近年、月9ドラマやTBS系列の火曜ドラマ等、有名タレントを使って視聴率を上げようと必死なキー局が、なぜ失敗作を生み出しているのか根本的な理由がわかってないそうです。

 

それはズバリ「脚本をいじってる」からです。どんなに手直しを加えても、原作に勝るものはありません。不出来な脚本を直す、という意味でならまだしも元々優れた脚本を改変する行為はNGです。なぜなら、原作が存在する作品には数多くの原作に慣れ親しんだファンがおり、その世界観やストーリーをよく知っているからです。そのため、原作ファンの期待を裏切るような改変は、以ての外、論外行為なんです。原作レイプという言葉もあるとおり、基本的に原作のイメージや世界観は踏襲したまま再現するのが原作ファンたっての願いなんです。

 

それをわかっていないキー局は、今度はオリジナルの脚本を手がけるライターを集め、選りすぐりの脚本を選んで新機軸に挑もうとしていますが、結局オリジナルの場合は脚本家の腕に全てがかかってるので、よほど熟練の脚本家でなければ大ヒットを狙うのは厳しいでしょう。テレビ離れが進む現在、いかにお昼帯・夜の時間の視聴者層をマークでき、視聴率上げに貢献できるか。また、最近のドラマ映画がいまいち伸びないのは、タレントの集客力を生かしきれてないのも原因だと思うのです。

 

いくらティザー映像に有名タレントを使って宣伝したり、ドラマ映画のHPにストーリーの一部分を載せてもタレントの持つ集客力がうまく利用できていないので結局「作品だけアピールしてタレントはそれを引き立たせる存在」という価値観が一般化してる以上、どうしても「作品>タレント」になってしまうんです。なのでタレントは知名度を武器に自分をアピールする必要があります。例えば、CMで「絶対に(ドラマ映画を)見てね!」と誘導を入れるときはナレーションではなくタレント自らが言ったり等。

 

タレントの有名度を活かしたプロモーション戦略こそ伸びる秘訣であり、タレントの「有名」が初めてここで役に立ったと思える瞬間でもあります。まずはタレントの知名度を存分にフル活用しましょう。