特定技能制度

ー概要
 
外国人労働者の需要が高まっている。コロナ禍のダメージを受け、宿泊・飲食業などサービス業の多くがインバウンドに対応した外国人受け入れ体制の構築を図っており、外国人労働者の補充が不可欠となっている。さらに、昨今から問題となっている少子化や高齢化により、日本はさらなる「高齢化社会」へのフェーズに突入する。団塊世代後期高齢者を迎え、介護職やケアマネ等の人手不足が問題となる中、政府の中で注目されているのが「特定技能制度」だ。
 
これは就労意欲のある外国人を自国に呼び寄せ、現地での実習と経験、さらに国技試験を受けさせながらその「在留資格」を認め、自国での労働を晴れて許可する制度のこと。いわゆる就労ビザであり、在留期間は1号と2号とで異なる。1号では5年間の在留期間制限があり、家族での帯同は基本的に不可である。正直、ここが私の腑に落ちない点であり、不可解なポイントでもある。ちなみに2号では家族での帯同は認められている。なぜ1号と2号とで帯同の可否が変わるのか。家族を離れ、海外(この場合は日本)へ出稼ぎに行く外国人にとって、家族との帯同は心の支えであり、暮らしの経済的基盤を確保する唯一の存在でもある。
 
例えば、日本に在留中、料理の経験がない外国人はどうやってその食費を賄う必要があるのか。特に妻が専業主婦だった場合、経験のない料理を1人でどうやってこなす必要があるのか。そのための在留資格であり、国の経済刺激を促すための人材育成なのだから、むしろこっちが優遇してやらないとおかしい立場なのである。にもかかわらず、1号は家族との帯同不可とは矛盾しているようにも感じる。
 
ー今後の危うい未来の打開策
 
2号は1号のさらに上をいく資格であり、より専門的な知識や実地演習、経験などが求められる。コロナ禍で外食業は壊滅的なダメージを受け、介護職は人材不足に悩んでいる。下手すると、病気の介護が受けられない高齢者が増え、若者の税負担もそれに伴い増加するという危険性が生じる。ちなみに外国人の在留資格は、技能実習からの切り替えも可能である。つまり、今技能実習生として働いている外国人が、特定技能への切り替えを図ることが可能であり、今従事している職務と関連性のある資格だった場合、特定技能試験の一部は免除される。特に技能実習生はコロナが流行る前からの日本滞在者であり、近年になって受け入れ見込み数が増加している。
 
外国人に現地で働かせ、インバウンドに対応した施策を打つことでより外国人労働者流入が顕著になると予想される。そのためには、まず受け入れ側の日本が、外国人が住み心地のいい場所と思えるような環境を作り、労働条件のハードルを下げた上で、家族帯同不可などの扱いをやめ、家族一緒で日本に暮らせる永住権取得、あるいは短期滞在でもいいので家族との繋がりを第一に考え、外国人労働者が受け入れやすい環境を整える必要がある。今の日本は、単一民族国家の名残か排他性を重んじるナショナリズムの傾向が未だ残っているのか、外国人に対する偏見は根強い。
 
外国人や移民政策を反対している人は、今後どのように日本の各業種の人手不足を補完し、埋める必要があるのか。その具体的な案を提示できる人がいるのか。腐り切った政財界では、まともな代替案も出せないだろう。そのため、2023年の特定技能制度の新設は、今までの先延ばし体質に比べたら快挙の決定と言える。しかしそれでも遅すぎるくらいだ。介護職やサービス業、製造業など賃金の低さが従業員のモチベ低下になっている事実も、政府は広報誌や議会を通じてより多くの国民に周知させ、ブルーカラーの重要性を今一度説く必要がある。