ホールディングス化(第2弾)

ー概要
 
ホールディングス化とは、複数の子会社に分けて事業を分散させる企業戦略の1つです。合併買収(M&A)と混同されがちですが、ホールディングスとの違いはM&Aが他社の事業を吸収してその既存の会社が完全に消滅してしまうのに対し、ホールディングスは既存の会社の事業が承継されるだけで消滅するわけではありません。当然の話ですが、1つの会社に複数の事業を展開している場合、どうしても仕事が分散してしまい、ある部門の経営がうまくいかないなどのリスクがつきものです。例えば、総務・人事・経理等、各種部門を1つの会社で行えば作業や業務の複雑化につながり、あるいはブラックボックス化の原因ともなります。
 
従業員1人1人が最適なアプローチで仕事を実行できるよう、取るべき手段として挙げられるのが「ホールディングス化」です。複数の関連企業を子会社にし、そこに1人1人適性にマッチした仕事を割り当てれば業務フローの可視化につながり、「何を目的にこの仕事をしているのか」という明確な目標意識が持てるため、従業員の勤労意欲の向上も期待できます。例えば、人事に関わる部門なら、人事評価を専門とした業務担当者にその部門を一任させ、部下の経営指導及び損益・貸借対照表キャッシュフローの透明化・簡略化に結びつくため、より仕事の業務の効率が上がります。
 
ー節税にも
 
また、ホールディングス化は節税対策にもなりうるのはご存知でしょうか。例えば、数社株を保有している大企業のオーナーにはそれぞれの株式にかかる税金が付与され、税負担の原因となりますが、これを子会社に株を移転させたり譲渡させることで、株式評価額の抑制につながり、税金の圧迫を防ぐことが可能になります。しかし、あまりに露骨な租税回避のためにホールディングス化を実行したと判断された場合には税務調査で否認となる可能性もありますのでご注意を。ホールディングス化にあたり、ここまでメリットをお話ししましたが、それに伴うリスクも同時に忘れてはいけません。
 
リスクヘッジの把握から実行まで
 
まずホールディングス化により部門を細分化するため、多くの人材が流入し、それにかかる人件費が膨れ上がります。また、逆にその部門の専門性を持った人材の不足に悩まされることもザラでしょう。会社が複数になるため、維持費管理費等のイニシャルコストも増大し、せっかく株価抑制や節税のために利益を上げようとしていたのに想定外のコストが重なり、損益分岐点の計算からマイナス収支が出てしまえば本末転倒であり、目的の利得も感じにくくなります。そのため、いかにコストを最小限に抑え、業務を効率化できるか。あるいは優秀な人材を呼び寄せるために、どのような経営方針・行動指針を打ち出せばいいのか。それを明確にすることが重要です。
 
例えば、「当社商品が50%シェアを占めるように」といった明確なビジョンが出せれば、それに向かって従業員も努力する方向性を固め、チームワークの強化につながります。ホールディングス化はそれなりのリスクも伴うので、検討される人はよく自社の持つ企業風土や理念などを照らし合わせ、ホールディングス化に適しているかどうかを確認することが重要です。優秀な人材を集めたいときは、他社からの引き抜きを検討するのもいいでしょう。あるいはM&Aにより他社を買収してホールディングスの傘下に置けば他社は消滅せずにそのまま経営を続行することが可能なので、より優秀な人材確保もしやすくなります。検討される方は是非ご一読を。