野原ひろし

ー概要
 
一軒家のマイホームに庭園付き。さらに料理がうまい美人の専業主婦と利かん坊息子・妹の4家族構成で暮らしを立てている。そんな野原ひろしは果たして世間でいう「負け組」に入るのか?否。当時こそバブルに沸いていたが、それでも一般社員の報酬は500万前後が相場であり、決して一軒家を購入できるほどの資産は有していないはずだ。購入するにしてもほとんどがローンを組むだろう。しかし、野原ひろしはそのような借金にまつわる金銭的トラブルの話は一切聞かない。つまり、この豪華な一軒家はローンを組むことなく自分の財産で購入したことになる。
 
まして最寄りの駅は徒歩圏内にあり、そのうえ自家用車まで所有している。おそらく土地代は2000万相当にまで膨れ上がっただろう。さらに4人家族であり、自分が会社に行くための交通費、家の生活費や維持費、水道光熱費等、4人分の費用が重なれば決して優しい費用ではない。むしろ息子のしんのすけは何不自由のない生活を好むため、少しでも部屋が暑かったりすればエアコンの設定温度を20℃にまで下げるほどの贅沢志向である。そうなれば電気代は目玉が飛び出るほどの額になるだろう。さらに野原家は愛犬であるシロも飼っており、餌にかかる費用も足せば普通のサラリーマンと専業主婦の家庭なら生活が成り立たなくなるほど火の車の家計だ。そんな野原ひろしが愛車を購入し、家族旅行やドライブも欠かさず、一般社員として暮らしを支えられているのは一体なぜだろう。
 
作中だけ見れば、何不自由のない裕福な家庭という印象を強く受ける。専業主婦のみさえはこれといった副業を持たず、家庭ママとして毎日通勤するひろしに対して愛妻弁当を作ったり、暇な時にはワイドショーや情報番組といったテレビを視聴。どう見ても一般家庭の専業主婦なのだが、それでなぜあんな暮らしが実現できるのか?おそらくそれはひろしの存在が大きなウエイトを占めているだろう。ひろしは一般社員だ。しかし、作中を見てると課長や部長との絡みが多く、飲み会に誘われても決して酔った勢いで不用意な発言はしない。つまり人付き合いがうまいのだ。(ちなみにみさえは酒癖が悪くすぐにベロンベロンになる)上司との距離を保つのがうまいからこそ会社でも待遇の良さがきちんと確保されており、臨時ボーナスや昇給に恵まれて普通の一般社員以上の給料をもらっているのではないか。
 
のび太パパとの比較
 
この見方が1番妥当だと思うが、それとは対照的なアニメのキャラクターが存在する。それはドラえもんに登場するのび太のパパだ。彼はひろしと打って変わり、1ヶ月分の給料が入った袋を課長に誘われるまま酒を飲み干していき、気づけばポケットの中に袋がなくなっていたという社会人としてあるまじき失態を演じている。また、家でもぐーたらしていることが多く、息子には「総理大臣」「パイロット」など自分の理想を強く押し付けているが、当人はしがない一般社員に甘んじており、他人任せである。そして何より酒に弱く、家に帰ったのび太のパパは手がつけられないほど悪酔いしており、母親やのび太ドラえもんですら頭を悩ませている。
 
どう見ても父親としての格はひろしのほうが上だろうが、所有する資産でいうとのび太パパもひろしに負けていない。こちらもドラえもん含め4人家族だが、庭付きの一軒家で大広間もあり、2階にはのび太の個室まで用意されている。なぜひろしよりはるかに格下であろうのび太パパがひろしに比類しうるセレブな暮らしを担保できるのか。バブルの恩恵を受けたこともあろうが、彼自身、もしかすると財閥の息子であったり親が資産家であったりする可能性も捨てきれない。ここまで来ると憶測の域を出ないが、まさに花男の世界である。