アレテーとは

ー概要
 
ソクラテスからプラトンへ、プラトンからアリストテレスへ、アリストテレスからストア派へ、脈々と受け継がれる知の共有…。彼らは、長きにわたる知の財産を書籍という形で文字に収め、後世へと受け継いでいます。このような財産は貴重であり、昔の人の価値観や思想を知る唯一の典拠となりうるもの。
 
アリストテレスが提唱した「アレテー」という観念は、現代人にとっても参考にできるもの1つの指標です。簡単に言えば、「人間が持つ道徳的な卓越さ」のことを言い、それは「知恵」「勇気」「自制」「公正」の4つの条件を満たすことでプラトンでいうイデアアリストテレスでいう「最高善」の極致たるところに辿り着けると言われています。
 
ー4段論法
 
人間にとって大事なものはまず「知恵」です。何かを生み出す能力、スキル。そして0からある物を作り出せるクリエイティブさ。知恵というのは「発想」と同一視され、発想はとっさの思いつきやインスピレーションを指すのに対し、知恵はこれまで養ってきた経験をもとに新しいものを創造し発展に役立てることを言います。
 
次に勇気。勇気とは、目の前に課題に恐れずに様々なことに挑戦する前向きな感情のことを言います。大きな志を持ち、その目標に近づけるためには「勇気」という名の武器が必要です。勇気を使い、目の前に立ちはだかる課題をクリアすることで次なるフェーズへと進めることをアリストテレスは示しました。
 
そして「自制」。精神医学でもよく使われる単語ですが、自制とは「自分を律して自分を制すること」。そのままの意味ですね。自制が働いている状態は、感情のコントロールができ、どうしても自分にはできないことがあれば一旦歩みを止めて自分自身を見つめ直す良いきっかけを与えてくれます。逆に自制心が乱れると、感情のズレや暴走が生じ、物事もうまく進めることができなくなります。
 
そして最後に「公正」。4人分のお米を炊いたとき、均等に分量を調節して分け与えるのは「公正」の気持ちがしっかり働いていることの証拠です。公正を欠いてるときは、いわばその対象を肩入れしている状態。ならばその処遇を正し、過度なひいきや肩入れはしないことが「アレテー」の到達点であり、アリストレテスのいう「最高善」に最も近い完成された1つの形といえます。
 
私たちはこの3段論法ならぬ4段論法を守ることで物事の達成度合いを図ることができるのです。1つでも不足している部分があれば、しっかり改善していきましょう。