フロイト(精神分析学)

ー概要

 

精神医学者ジークムント・フロイトは、精神医学の父親であり、心理療法士でもある。患者1人1人の心の悩みや意識のズレを「自由連想法」で正し、その浮かび上がった観念や意識をもとに患者の潜在的なニーズを引き出していく。精神医学という言葉こそ現代では哲学におけるホットなワードとなっているが、フロイトが生きた時代では精神医学という言葉はあまり知られていなかった。フロイトは、意識・前意識・無意識の3本立てで人間の心や感情の動きをフロー化し、人間の大部分の行動は、無意識的に抑圧された観念や衝動から引き起こされるという結論を導き出した。

 

しかし、無意識とは自我では把握できない未知の領域にあり、それを可視化するための方法として「自由連想法」が用いられた。まず1人の患者に、あらかじめ用意した刺激語(患者の心に訴え、的確な回答を誘導する言葉)を次々に問いかけ、例えば極端な例で言えば「りんごは好き?」という質問でも自由連想法としての根幹は成り立つ。りんごは好きという観念から、さらに飛躍して「りんごが赤いのはなぜだと思う?」「なぜりんごが好き?」といったように質問のジャンルを変えながら患者に問いかけ、患者が普段意識していない潜在的な意識を引き出すのが目的である。

 

マーケティングの応用にも

 

これはマーケティング手法にも取り入れられ、顧客インサイトの分析に役立つ。顧客の求めている需要と、そのニーズに応えようとする企業との間にギャップが生じていないか、顧客が求める潜在的なニーズを探るため、自由連想法を用いることもある。前に述べた自我とは、自分を律し、自分を制するという意味である。これに対し、エス(無意識)とは性的欲望や破壊的衝動のことをいい、いわゆる「人間的な欲望」のことを指す。その仲裁的な役割を果たしているのが、超自我という概念である。

 

フロイトは、この3つのバランスがうまく保たれてこそ人間の心は満たされる、と定義している。少し難しい話だが、マーケティング手法にも自由連想法が用いられ、そのデータをもとに顧客との関係性を築いている企業もあるということは、決して哲学だけの話に終わらない。それだけホットな分野と化しているのだ。