トムソーヤの冒険

ー概要

 

トムソーヤの冒険とは、マークトウェイン著書の原作およびテレビアニメである。イタズラ好きの少年トムソーヤの日常を描いた作品。1番の見どころは、やはりマフポッターが裁判にかけられた際、虚偽の証言をしたインジャンジョーに対し、トムが勇気の限りを出して法廷内で「お前が犯人だ!」と叫んだシーンだろう。…といっても、原作やアニメを知らない方にとっては全くわからないと思うので、ここからはトムソーヤの冒険の真骨頂に迫りたいと思う。

 

ー主人公トム

 

麦わら帽子に、青いオーバーオール、素足という、なんとも軽装かつラフな出で立ちをした腕白少年。初めだけ見るとただの「生意気な悪ガキ少年」という印象を抱くかもしれない。実際そうである。トムの伯母であるポリーもそれに頭を悩ませており心痛の種でもあった。

 

しかし、話数が進むにつれ、トムの知られざる本当の性格が明らかになっていく。まず、ポリー伯母が病気で寝込んだ際、そばに寄り添い、なんとポリーから「もう長くは生きられない」(これはトムのポリーに対する思いやりを試すための仮病だったが)と言われ、トムは悲嘆。その場で泣き崩れてしまう。そう、普段はポリー伯母のことを疎ましく思っているトムでも本当は心配していたのだ。これがトムの優しさが垣間見れた瞬間である。

 

次にアルフレッドとの戦い。模範生かつ優等生であるアルフレッドとは対照的に、イタズラ好きで問題児のトムは、先生や周りからも疎んじられていた。そして何よりベッキー(トムが一目惚れした少女)とアルフレッドが仲良く話しているところを見て激怒。裏地に連れて行き、「10日後に1体1の決闘をする」という約束を取り付けた。

 

宣言通りアルフレッドはそれを承諾。ミシシッピ川をはるか上流へ渡った先にある島で、トムとアルフレッドは決闘。審判はハック(トムの親友)とアルフレッドの使用人が担当。最初はアルフレッドに2度パンチされてダウンを奪われるも、その後攻勢は一転。頭突きをしたトムがアルフレッドに馬乗りになり、何度もパンチで殴打。ほぼ互角の勝負だったが、審判による公平なジャッジで引き分けという体裁が取られ、決闘は幕を閉じた。最後にはもうかつての憎しみや恨みといった感情はなく、お互いを褒め称える良きライバルとなっていた。さらにこの決闘の後、筏で溺れかけたアルフレッドの肩を担ぎ村まで送り届けるという優しさまで見られた。(アルフレッドは実は泳げない設定)

 

次はベッキーとの仲直り。ベッキーとは日曜礼拝の際に知り合った少女であるが、そのときはトムのことを認知しておらず徹底的に無視を決め込んでいた。しかし、トムの人柄に触れて仲良しになる。ベッキーが持参した弁当の分け前をトムがもらったり家に招待されるなどして、2人は親交をますます深めていった。…しかし、トムには実はもう1人のエミーという恋人がいた。そのことをうっかり漏らしてしまいベッキーは激怒。せっかくもらった花束も散らせてしまい、それ以降トムとは見向きもしなくなった。

 

しばらく絶交状態が続いていたが、海賊ごっこを経て村の者たちから英雄視されると、再びベッキーとよりを戻すべくトムはベッキーに何度もアプローチを仕掛ける。しかし、ベッキーはこれをことごとく無視。その根深い嫉妬はいつまでも消えることはなかった。ある日、トムと険悪な仲であるチャーリーがトムの教科書の1ページにインキをこぼし、その一部始終を見ていたベッキーはトムにそのことを伝えようとしたが、嫉妬がやはり勝ってしまい言いあぐねてしまった。

 

そして先生に見つかったトムは鞭打ちをされることに…。良心の痛みを感じながらも、素直になれないベッキーはトムを助けることができなかった。午前の授業が終わり、休み時間の最中医学書に興味を持ったベッキーは先生の机をこっそり拝見。医学書を持ちそのまま読んでいたが、トムが教室に入った瞬間、その本を落としてページを破いてしまう。トムは呆気に取られ、ベッキーは「あなたが入るからこうなったのよ!」と激怒。教室をそのまま去っていった。

 

そして運命の時。しばらく予習をしていた生徒たちと医学書を読む先生。しかし、何か異変に気づく。そう、ベッキーが破いたページを見てしまったのだ。犯人を突き止めるため生徒たちに自白強要を迫るが、誰も口を割らず事態は難航。しかし、その手前でブルブル震えていたベッキーを先生は訝しんでいた。そしてベッキーを問い詰め「君がやったんだな!」と怒鳴ると、トムが席を立ち上がり「僕が破りました先生。」と自白。先生は「本当にお前が!」と怒りをあらわにし、長時間にわたる鞭打ちの刑が始まった。なんとトムはベッキーの罪を自らが背負うことでベッキーの不始末を庇ったのだ。その後、ベッキーは放課後までずっと校舎の前でトムを待っていた。ついに仲直りを果たし、今までのせめてもの恩返しとして「あなたみたいな優しい人はいないわ」と最大限の感謝の言葉を告げた。トムの優しさが垣間見れた瞬間である。

 

そして最後にマフポッターの公判。インジャンジョーというならず者のインディアンと医者のロビンソン、大酒飲みのマスポッターが3人で夜中に死体を掘り出す作業をしていた。ロビンソン先生はインジャンジョーとマフポッターを死体を掘るのに手伝わせ、死体の解剖を急ぐがインジャンジョーの脅しによりきな臭い事態に…。ロビンソンはインジャンジョーに対して「お前の弱みを握っている」と説き伏せ、インジャンジョーを強引に懐柔させるが、それをよく思わないインジャンジョーはロビンソンをナイフで刺殺。さらにその遺体を酔っ払って倒れていたマフポッターに見せ、自分がロビンソン殺害の片棒を担いでいたという虚偽の証言をする。罪をなすりつけられ、マフポッターは困惑。そしてその一部始終を見ていたトムとハック。

 

恐怖のあまりトムはその日眠れず、翌日遺体となって発見されたロビンソンの検死が始まった。すると、凶器に使われたナイフはマフポッターのものという検証がなされ、マフポッターを事情聴取。まだ何も言ってないのに焦りを見せるマフポッターを刑事は怪しいと判断。ついに罪を認めてしまい、公判期日まで牢屋に閉じ込められてしまう。それを見ていたトムは良心の痛みからマフポッターにこっそり食べ物を配給。嬉しくて泣き崩れるマフポッターを見てトムももらい泣きしてしまう。

 

そしてトムはマフポッターの無実を証明するため顧問弁護士を雇い、話を伺う。刻一刻とせまる公判期日。ついにその日がやってきた。法廷内には被告人マフポッター。弁護士。裁判官。証言人インジャンジョー。その他聴衆が大勢出席していた。インジャンジョーが何食わぬ顔で嘘の証言をベラベラ喋るが、弁護士はそれに対する反対尋問を一切行わなかった。裁判官はそれに難色を示すが、弁護士はトムを証言台に立たせ真実を語るよう促す。

 

あの事件が起こった場所や時間帯など詳細な情報を語るにつれ、インジャンジョーの呼吸は荒くなる。そしてついにロビンソンを殺したのはインジャンジョーだと証言。聴衆はざわめき、インジャンジョーの呼吸は酸欠した魚のように荒くなっていた。最後にとどめとしてトムは勇気を出し、「お前がロビンソンを殺したんだ!」と法廷内に響き渡る声で叫んだ。ついに本性を明らかにしたインジャンジョーは法廷内で暴れ、窓を割って脱走。みすみす取り逃してしまったが、無実が証明されたマフポッターはトムの勇気に感謝し号泣。トムも泣きそうな顔だった。

 

ートムの最大の魅力

 

一般的にトムのイメージといえば、イタズラ好きで周りが見えない走り屋といったところか。しかし、話数が進むにつれ、そのイメージは覆る。ベッキーとの仲直りのシーン。鞭打ちというただでさえ厳しい体罰が待っているのに、ベッキーの件は一切漏らさず、自分が体を張ってベッキーを庇った。

 

トムの優しさは1話2話だけじゃ気づかない。物語が進むにつれ、その厚みが出るタイプだと思う。気づけば、読者は皆、トムの優しさに感動している。しかもトムの優しさというものは、実に気取ってない自然体なものだ。初めから見返りを求めるような身構えた優しさではなく、それとなく匂わせるようにふとした優しさをのぞかせるのがトムの最大の魅力だ。

 

シーン別に見ればわかるが、トムはベッキーの件でもマフポッターの件でも一切見返りを求めていない。恩に報いるのは恩、という日本の美徳があるが、それもトムには一切なし。ゴリ押した優しさではなく、ふと見せる自然体な優しさであるからこそ読者の共感も誘いやすいのではないか。その大いなるギャップに読者は惚れるのである。