精神分析学

ー概要

 

「苦しみの連続」を説いたニーチェ厭世観に通ずる過激な思想ですが、何もかも苦しみに満ちているわけではなく「超人思想」つまりどんな苦しみも受け入れる超人的な意志の強さを持つことで、苦しみから解放されるということを説きました。そこで登場するのがフロイトの提唱した「無意識」です。抑圧された無意識の感情が苦痛の原因と突き止めたフロイトは夢や自由連想などの分析を通して無意識を顕在化させ、ヒステリー患者にいくつか質問を投げかけ、患者が答えたものをひとかたまりの意見に集約させ、過去のトラウマや心根に潜んでいる思い出したくない苦痛などを浮かび上がらせていきます。

 

意識と無意識は、意識→無意識に移行する段階があり、その代表例が催眠、投影調査、薬物、マインドフルネス(瞑想)です。しかし、これでは極めて非合理的手法であり、無意識の患者に対して意見を引き出すのは困難と悟ったのか患者の主観的体験(把握)に基づく設問を盛り込み、ときに患者が自分の本能に逆らい望んでもない回答をするのを防ぐためダミーの設問も交えて患者の本質を探ります。これこそが精神分析学であり、精神医学の父フロイトが創始した心理学の一分野です。

 

ーIT分野にもその萌芽が

 

意識と無意識は2つの間でピストンのように交互する連続性があり、集合的な記憶の蓄積により過去のトラウマや出来事をより想起しにくくなるとされています。コンピューターでは主に論理演算といい、数字は0と1しか使わない、いわゆる2進数が組み込まれていますが、これは情報処理速度やOSの向上を図るための措置であり、10進数が例外として使われるケースもありますが、原則的に2進数のみの使用となります。これを意識と無意識の世界に置き換えると、設問に「はい・いいえ」の2択だけで回答させるアンケートは2進数の応用例であり、いわば自分の適性や性質などを引き出すため、アンケートの簡便さに重きを置いた格好となります。

 

精神分析学では自由回答形式より2択形式のほうが好まれやすいとされます。2択の設問から徐々に患者のニーズや答えに近づけるという手法は有効といえ、「はい・いいえ」のいわゆるクローズドクエスチョン形式では自由形式より嘘偽りの回答が少なくなる分、患者の(潜在的な)トラウマや本質を引き出すことができ、ある種最後の回答が患者にとっての到達点です。最後の回答を終え、そこから加算的にデータを蓄積し、抑圧された感情や気持ち、トラウマなどを可視化していきます。これが精神分析学のやり方であり、夢分析自由連想法などを通すことで初めて言葉に表せられない感情の発露となり、トラウマ、欲求不満、苦しみからの解放に結びつくのです。

 

皆さんも日常社会でストレスを溜め込んでいたら、我慢せず吐き出してみてください。それを可視化するための方法が精神分析学です。