童貞いじり

ー概要

 

童貞いじり…。それは男の彼女なしあるいは性体験のあるなしをいじるもの。20代に入れば彼女がいることは当たり前という傾向が強くなり、一層童貞いじりは加速する。しかし、童貞いじりは社会的に許されるべきことなんでしょうか?例えば、その逆の”処女いじり”というものは存在しません。童貞を処女に置き換えるととたんにセクハラ感が増しませんか?男性の童貞いじりは許されるけど女性の処女いじりは許されない。何がこの2つを明確に分けているのでしょうか?今回はそれについて書きたいと思います。

 

ー童貞は笑いの対象

 

私はそうは思いませんが、童貞は昔から笑いの対象とされており、芸能界でも数多くのタレントが童貞であることを自ら公言することで笑いを誘い人気を集めることに成功しています。いわゆる強者の世界ですから、強者が童貞であることにシンパシーを感じる人が多いのでしょう。同じ童貞同士が共鳴し合い、より同質性を高める。それはファンとの接点を生むことに大きく貢献し、一部からは同情の声も上がるほどです。恋愛離れが進み、童貞に対する偏見はそこそこ薄れてきてはいますが、それでも童貞いじりは今なお続いています。

 

芸能人がそうした童貞を自らカミングアウトすることに何の意味があるのか?おそらくファンとの距離感を縮め、自分の強みにつけ入るコスいヤツらが出ないようにあらかじめ防御網を張っているのかもしれません。芸能界で生き残る人たちは勝ち組です。強者が勝ちを誇り彼女持ちを高らかに公言する。そんな人だったらファンは応援するどころか離れていきます。それをあえて防ぐ目的で童貞であることを自らカミングアウトし、あらかじめ溜飲を下げておく。そうすることでいくら成功して人気が出ようが「この人は童貞なんだな」とファンの中でカテゴライズすることができ、成功してる人でも童貞だから…と自制がきくようになります。

 

ーいじる対象の区別

 

かつては笑いの対象であった童貞いじりも、コンプライアンス遵守に厳しい芸能界では禁じ手とされるようになりつつあります。というのも、童貞というのは本来「純潔を保つ。私欲がなく、清らかでまっすぐなこと」を意味する、肯定的なニュアンスを帯びていました。ところが戦後日本に入り、「産めよ増やせよ」のスローガンが掲げられてから結婚に対する前向きな施策がとられるようになり、「童貞であることはむしろ恥」というイメージに変化してしまったのです。童貞いじりが起きたのもちょうどその頃です。童貞に対するイメージがますます悪くなり、結婚後のライフスタイルで勝ち組を自称し、デートでいちゃついてるアベックや夫婦などが嫌というほど出始めたため、もはや童貞=罪レベルにイメージは捻じ曲がってしまったのです。

 

しかし今では多少そのイメージが薄れ、童貞いじりはむしろ笑いの対象になりつつあり、強者が童貞であることをカミングアウトしてそのギャップを楽しむという一種の遊び方が成立しています。例えば、強者(イケメンやぼんぼんのお金持ち等)に「童貞なんだ〜w」と皮肉まじりに言っても強者をいじる構図が成立しているため、むしろ許される感がある。しかしこれが弱者(ブサイクや貧乏人等)をいじる構図だったらどうでしょう。もはやいじりではなくいじめの域にまで達します。強者への童貞いじりは許されるけど、弱者への童貞いじりは許されない。その区別がはっきりできていない人が多いように感じてなりません。