仕事へのモチベーション

ー概要

 

私の母親は公認税理士だ。自他ともに認める、税理士のプロの道であり、伝道者でもある。複雑化する税金の計算に頭を悩ませながらも、10月に導入されるインボイス制度に先駆けて、前々から知識を蓄えていた母親の先見性にはアッパレである。

 

税理士とは、税金の計算や会計などの業務を担う職業だ。例えば、新たに税金を追加するなら国民全体を巻き込んだ施策になりうるし、軽減税率の導入などは貧困層と富裕層との格差を埋めるための施策だったらしいが、結局イートインは何%引きなど細かい計算が求められ、さらなる業務の複雑化、ブラックボックス化を促進してしまった。

 

消費税は特に複雑であり、10月から導入されるインボイス制度によりさらなる複雑化が予想される。これまで消費税を納めなくてよかった免税や個人事業主から税金を巻き上げ、それを国庫に納めさせるというのが政府の狙いらしいが、そもそもそんな焼け石に水の政策では税金の負担をさらに増やすだけでなく、業務フローの複雑化にも拍車をかけることとなる。消費税はそもそも廃止すべきとの声も上がってるほどだ。なぜそれを理解してまで、消費税を必要以上に搾取するのか。わざわざ格差を減らすために軽減税率という方法を取るなら、もっと効率のいい分配の仕方はできないのだろうか。

 

ー日本が抱える課題

 

待機児童問題、ケアマネの人材不足、子育て支援の乏しさなど、日本が抱える喫緊の課題は数多くある。また老後生活を支える年金も、徐々にその額を減らしつつある。老後も満足に暮らせない高齢者が増え、病気にかかりやすい高齢者を迎え入れる病院も定員オーバーしており、さらにそれを介護するケアマネ不足も深刻な問題となっている。団塊世代後期高齢者となりつつあり、日本は本格的な世代交代の時期を迎えている。

 

若者は大学や専門学校を卒業し、新たな職について日本の経済を下支えする貴重な存在だが、どうやら就業意欲の減退がここにきて一層目立つように感じる。それもそのはず、ほとんどの職業は給与に難があり、年功序列や格差など勤続年数の多さ=給与の高さという根本的な問題が依然としてあるため、同じ若者と高齢者とで公正な処遇が確保されていないのも、若者が仕事にモチベを感じにくい1つの原因となっている。

 

ー高齢者を支える若者の人材不足

 

私事で申し訳ないが、私は介護職に就こうと思っていた時期がある。足腰の弱い高齢者を支え、排泄から着替え、ベッドの乗り降りをケアする介護人としての憧れを持っていた。しかし、そういう職業はだいたい給与が低い。こういうと拝金主義のように聞こえてしまうかもしれないが、そうではない。社会への貢献度と給与が比例していないのが何より問題なのだ。国会議員や官僚、閣僚など、公的機関に属する重役たちは、ろくに仕事もせず皆高い給与を得て満足している。国会議員の全員がそうだとは言わないが、国会議員の給与削減に関わる話がたびたび上がるのも無理はないように思える。国への奉仕、という意味では高齢者を介護するケアマネのほうがはるかに需要がある。

 

高齢者は戦後日本の経済を回復させた立役者だ。そして今度はその高齢者を支える立場になる。それこそ恩返しというものだ。高齢者を支える介護人は、病院が不足する現状にとって最も必要な存在である。政府は国をあげてでも介護人やケアマネの給与アップに全力を尽くすべきではないか。若者が仕事にやりがいを感じないのは、待遇面に問題を抱えているからなのである。それを日本政府は強く認識するべきである。